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第3回建築ツアーin長崎
2020年3月29日

みなさん、こんにちは!設計の甲斐です。

3月27日に長崎へ建築見学へ行ってきました。

今回の建築ツアーは大雨の中、5か所見学させていただきました。では早速紹介していきます!

 

丘の礼拝堂 (設計:百枝 優)

長崎あぐりの丘高原ホテルの中にある礼拝堂です。装飾と構造体としての木組は家系図をイメージとしており、上下に広がっていく木が立体感を出し幻想的な空間でした。今回は大雨で見れませんでしたが、晴れた日には正面に海と自然の広がる壮大な景色を一望できるそうです。残念(泣)。構造体を接合する鉄骨のジョイントを板状の埋木で隠しているところなど細部にまでこだわっており、木の香りがする素敵な建築でした。是非晴れた日にまた見学したいです。

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 聖フィリッポ教会/日本二十六聖人記念館 (設計:今井 兼次)

ガウディの建築を想起させるような双塔が特徴的な教会です。双塔には各地から集められた陶磁器で模様づけられ、近くで見ることもできます。内部空間は色鮮やかなステンドグラスと長崎の教会建築らしい木の天井で構成されていました。以前社員旅行で見学した沖縄県の聖クララ教会にも共通していましたが、内部空間の中で祭壇空間が一番明るくなるように祭壇のところのみ縦スリットのハイサイドライトが設けられ、採光計画がなされていました。これは私の大学院時代の友人が教会建築の採光計画の研究の一部として発表していたもので、地域問わず教会建築に共通するものだと2年越しに実感することができ何だか嬉しくなりました。九州地方以外にも共通するものなのか違う教会を訪れた際には確かめてみたいです。みなさんも教会訪れる機会がありましたら是非注目してみて下さい!

 

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長崎県美術館 (設計:隈 研吾)

これまでに訪れた大分、熊本でもそうですが、隈研吾さんの作品は建築ツアーには欠かせないものになりました。見学した長崎県美術館は直前までコロナの影響で一部を除いて中に入ることができませんでしたが、今回は延期されていた展示会も観ることができました。外部は鉄骨の力強いストラクチャーに石材のプレートで構成されており、水路と調和した美しいファサードでした。内部は企画展示に合わせて壁が動かせるよう格子状にレールを組んだフレキシブルな構成で、乳白色の照明が格子の隙間から漏れ、柔らかな空間となり、機能性を満足させながら、展示物を邪魔しない空間でした。隈さんの建築は誰もこんなところまで見ないだろうなというところまで丁寧に計画をしており、見えないところまでディテールを追求することに毎回凄みを感じます。大きなものをきれいに見せるためには小さなところまでこだわることが大切だと勉強になりました。

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湧水庭園「四明荘」

島原にある明治期に建てられた家全体が茶室の建物です。庭に湧き水で造られた池があり、大きな鯉が泳いでいます。水温が一定に保たれており、夏場は水面の冷気が風に乗って中に入り込み快適な空間を造ります。また庇が深く出ていることから雨が入り込む心配もありません。私たちが家造りの軸にしているパッシブデザインの原型がここにありました。また、水面に向かって設けられた縁側は室内側に勾配がつけられていることから池に落ちないよう心理的に防いでいることや縁側に腰かけた時に座り心地が良いなど工夫や配慮も施されています。おもてなしをしていただいた、おばあさんによる島原の土地の歴史や建物の紹介はとても面白く、勉強になりました。

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しまばら湧水館「旧三村家住宅」

湧水館「四明荘」の近くにある旧三村家の住宅です。当時のガラスが一枚も割れておらず今でも残っており、横からのぞくと歪んで見える昔ながらのガラス戸が見どころの建物です。ガラスは1mmほどの薄いガラスでよく割れずに残っているなと関心しました。内部は中廊下型で両脇に座敷が配置された空間です。片方は壁で仕切られた座敷ともう片方は襖で仕切れる奥に長い座敷で構成されています。島原は昔隠れキリシタンが住んでいた地域であったことから一年中注連縄を玄関先に飾っておく風習や押入に祭壇を隠せるよう工夫されているところがここでは今でも見ることができます。風がガラス戸を叩く音や畳や欄間が造る空間は、懐かしい雰囲気が感じられた建築でした。

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今回の建築ツアーは長崎市内から島原まで長崎を横断して多種用途の建築を見学しました。地域性を活かし風景を取り込んだ建築や地域になじみ新しい風景になる建築、歴史性や時代の風習を感じさせる建築を見学し、感性が磨かれた一日となりました。長崎にはまだまだたくさん良い建築があります。造られた時代を問わず、それぞれが訪れた人達に何かを伝えようとしている建築が多いように感じています。今回は見学できなかったところもまたいつか紹介できればと思っています。

次回の建築ツアーは佐賀県を予定しています。佐賀にも魅力的な建築がたくさんありますので次回のブログも楽しみにお待ち下さい!

 

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